甲状腺(こうじょうせん)は、首の前側で喉ボトケのすぐ下にあります。甲状腺ホルモンを産生し、新陳代謝、心臓、胃腸の働きを活発にするなどの役割をする臓器です。正常では15g位で柔らかいので触れてもわかりません。
結節性甲状腺腫の約9割以上は良性で濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)や腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)などです。悪性腫瘍には甲状腺がんと悪性リンパ腫があります。甲状腺がんの大部分(80~90%)は乳頭癌(にゅうとうがん)で、その他に濾胞癌(ろほうがん)、髄様癌(ずいようがん)、低分化癌、未分化癌がありますが、乳頭癌や悪性リンパ腫は橋本病の方にやや多いと言われています。一部の髄様癌は家族性であることが分かっています。
バセドウ病や橋本病は、自己の免疫が、自分の甲状腺のある部分を異物と見なすようになって攻撃する自己免疫疾患です。
亜急性甲状腺炎は、何らかのウイルス感染が原因と言われています。
触診の他に、超音波検査を行い、甲状腺の大きさや内部にあるしこりの性質、広がりの状況を調べます。血液検査に加えて、甲状腺のしこりに細い注射針を刺して細胞を回収し、良性か悪性かを調べることもあります(穿刺吸引細胞診)。時にはアイソトープ検査(甲状腺シンチ)をして診断することもあります。
悪性と判明した場合は、病気の広がりを調べるために、CT検査やMRI検査などをすることがあります。
甲状腺がんに効く抗がん剤はありません。手術で取り除くことが基本となりますが、腫瘍の大きさが1cm以下で転移を認めない場合は、手術せずに経過を見る場合もあります。
一方、細胞診等で悪性の証拠がなくても4cm以上のものは手術を勧めることがあります。
甲状腺がんの手術は病気の広がりに応じた甲状腺の切除(下図)と、周囲のリンパ節郭清を同時に行います。
全摘手術の場合、手術の後、放射線治療(アブレーション治療)を追加して行うこともあります。
なお、バセドウ病、橋本病や亜急性甲状腺炎のような、手術以外の方法で治療する甲状腺の病気は、当院の場合、内分泌・代謝内科で治療しております。
首には傷を作らない
内視鏡甲状腺・副甲状腺手術を行っております
従来より頸部に約5~7cmの横切開で手術をしていますが、2022年より当院では適応症例に対して、積極的に完全内視鏡手術(二酸化炭素による送気法)にて、甲状腺切除や甲状腺周囲のリンパ節郭清術を施行しております。
首には傷をつけず、脇の下(腋窩)か、下着で隠れる前胸部に、3cmと0.7cmの2つの切開創のみで手術しており、美容的にとても優れている手術方法です。ご希望がありましたらご相談ください。
左腋窩アプローチの時の傷のイメージ